日本で働く、外国人材の未来
近年、日本における外国人労働者の数は増加の一途をたどっています。その背景には、日本の深刻な生産年齢人口の減少と、それに伴う労働力不足が大きく関係しています。
増加する外国人材、減少する日本の生産年齢人口
厚生労働省の発表によると、2022年10月末時点の外国人労働者数は約182万人と過去最高を記録しました。一方で、日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少し続けており、今後も減少が見込まれています。この現状は、日本の経済成長や社会保障制度の維持に深刻な影響を及ぼすことが懸念されています。
都市部と地方、異なる人材の需給バランス
人材不足は全国的な課題ですが、特に地方では深刻です。多くの若者が進学や就職を機に都市部へ流出し、地方では人手不足が顕著となっています。一方で、都市部では外国人労働者が増加しており、特定の産業で重要な労働力として活躍しています。しかし、都市部においても業種や職種によっては人材不足が深刻化しており、地域や業種による需給バランスの違いが浮き彫りになっています。
このような状況の中、日本政府は外国人材の受け入れ拡大に向けた様々な施策を打ち出しています。その中でも特に注目されているのが、「技能実習」「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」といった在留資格です。これらの制度は、日本の労働力不足解消に貢献するだけでなく、外国人材にとっても、技術や知識を習得し、キャリアを築く機会を提供しています。
外国人労働者のための在留資格
日本で働くためには、適切な在留資格を取得することが必須です。ここでは、外国人労働者が主に取得する代表的な在留資格である「技能実習」「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」について、それぞれの特徴や違いを詳しく解説します。
1. 技能実習 – 途上国への技術移転を目的とした国際貢献
1-1. 技能実習制度の概要
技能実習制度は、日本の技術、技能、知識を開発途上地域へ移転し、経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とした国際貢献制度です。実習生は、日本の企業と雇用契約を結び、実践的な技術や技能を習得します。
1-2. 技能実習の区分と在留期間
技能実習は、実習の進捗状況に応じて**「技能実習1号」「技能実習2号」「技能実習3号」**の3つの区分に分けられています。
- 技能実習1号: 入国後1年目の技能等を修得する活動(講習を含む)
- 在留期間:最長1年
- 技能実習2号: 2、3年目の技能等に習熟するための活動
- 在留期間:最長2年
- 技能実習3号: 4、5年目の技能等に熟達する活動
- 在留期間:最長2年
技能実習1号から2号へ、2号から3号へ移行するためには、所定の技能評価試験に合格する必要があります。技能実習3号(監理団体・受け入れ企業双方に優良要件クリアの必要性あり)まで修了すると、最長5年間日本で働くことができます。
1-3. 技能実習の対象職種
技能実習には、移行対象職種・作業が定められており、これらの職種・作業でのみ技能実習を行うことができます。対象職種は、農業、漁業、建設、食品製造、繊維・衣服、機械・金属関係など、多岐にわたります。
1-4. 技能実習生の受け入れ方式
技能実習生を受け入れる方式には、「企業単独型」と「団体監理型」の2種類があります。
- 企業単独型: 日本の企業が直接、海外の現地法人や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する方式
- 団体監理型: 事業協同組合や商工会などの監理団体が技能実習生を受け入れ、傘下の企業で技能実習を実施する方式
以下の記事より、技能実習制度について詳しく解説しております。
2. 特定技能 – 人手不足が深刻な産業分野での就労
2-1. 特定技能制度の概要
特定技能制度は、人手不足が深刻な特定の産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れるための制度です。2019年4月に創設され、技能実習と並んで注目されている在留資格です。
2-2. 特定技能1号と特定技能2号
特定技能には、**「特定技能1号」と「特定技能2号」**の2種類があります。
- 特定技能1号: 特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
- 在留期間:通算で上限5年
- 家族の帯同:基本的に認められない
- 特定技能2号: 特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
- 在留期間:更新に上限なし
- 家族の帯同:要件を満たせば可能(配偶者、子)
特定技能2号は、より高度な専門性・技能が求められるため、対象となる産業分野は限定されています。
2-3. 特定技能の対象分野
特定技能の対象分野は、人手不足が深刻な以下の12分野です。
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
2-4. 特定技能への移行
特定技能1号を取得するためには、日本語能力試験と各分野の技能試験に合格する必要があります。ただし、技能実習2号を良好に修了した外国人は、これらの試験が免除されます。
3. 技術・人文知識・国際業務 – 専門知識を活かした業務に従事
3-1. 技術・人文知識・国際業務の概要
「技術・人文知識・国際業務」は、大学等で学んだ専門的な知識や技術、または実務経験を活かして、日本の企業等で働く外国人向けの在留資格です。いわゆるホワイトカラーの職種が対象となります。
3-2. 技術・人文知識・国際業務の対象となる業務
「技術・人文知識・国際業務」の対象となる業務は、大きく分けて「技術」「人文知識」「国際業務」の3つに分類されます。
- 技術: 理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術または知識を要する業務(例:システムエンジニア、プログラマー、機械設計技術者など)
- 人文知識: 法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する知識を要する業務(例:経理、人事、法務、企画など)
- 国際業務: 外国の文化に基盤を有する思考または感受性を必要とする業務(例:通訳、翻訳、語学指導、海外取引業務など)
3-3. 技術・人文知識・国際業務の要件
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 学歴要件: 従事する業務に関連する分野を専攻して大学を卒業していること、または10年以上の実務経験を有すること(国際業務の場合は3年以上)
- 業務内容: 学歴や実務経験に関連する専門的な業務に従事すること
- 報酬: 日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を受けること
3-4. 技術・人文知識・国際業務のメリット
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、在留期間の更新に上限がなく、要件を満たせば家族の帯同も可能です。また、転職の制限が比較的緩やかであるため、キャリアアップを目指す外国人にとって魅力的な在留資格となっています。
アジア総合開発事業協同組合は3つの在留資格で中小企業の皆様をサポート
日本の労働力不足解消の鍵を握る外国人材。その受け入れを支える「技能実習」「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」といった在留資格は、それぞれ異なる目的と特徴を持っています。
アジア総合開発事業協同組合は、企業の皆様のニーズに合った在留資格をご提供し、適切な外国人材の受け入れと育成に努めております。